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東京地方裁判所 昭和35年(ワ)2909号 判決

原告 昭和信用金庫

理由

成立に争のない甲第二号証、第十一号証の三、四、日付の部分を除く部分の成立に争がないから、日付の部分も真正に成立したものと一推定すべき同第一号証、公証人作成部分の成立に争なくその余の部分は当裁判所が真正に成立したものと認める同第十一号証の一、記名または署名、その名下の印影の真正に争がないから被告会社代表者、被告高瀬、破産者和田各作成部分は真正に成立したものと推定すべき同第十一号証の二によれば、原告主張の一の事実を全部認めることができ、右認定に反する証人和田鐐造の証言、被告兼被告会社代表者高瀬竹松の本人尋問の結果は信用し難く、他に右認定をくつがえすに足る証拠はない。

よつて、被告高瀬及び被告破産管財人の契約解除の抗弁について判断する。被告高瀬訴訟代理人が昭和三十七年八月三日の口頭弁論期日で、被告破産管財人訴訟代理人が昭和三十八年十一月二日の口頭弁論期日でそれぞれ原告訴訟代理人に対し原告が手形の割引に応じなかつたことを理由として連帯保証契約を解除する旨の意思表示をしたことは記録上明白であり、原告が昭和二十八年二月下旬及び同年三月中被告会社の求めによる被告ら主張の約束手形の割引を拒絶したことは当事者間に争なく、原本の存在及びその成立に争のない乙第九号証の一、二、三、証人日下部松助、和田鐐造の各証言、被告兼被告会社代表者高瀬竹松の本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば当時から被告会社の代表取締役であつた被告高瀬及びその前代表取締役である破産者和田は、本件準消費貸借成立の際、原告の代理人であるその日本橋支店長小川美治が被告会社のために一カ月四、五十万円を限度として手形を割引くことを約し、被告会社がその対価の一部を本件債務の弁済にあてることを約したので、小川の要求によりこれを条件として本件連帯保証をしたこと、右割引を拒絶された手形の内少なくともクサカベ油絵具製造振出の手形二通は信用のある手形であり、いずれも他で割引いてもらい、満期には完済されていることが認められ、原告が右割引拒絶手形を割引の適格がないと判断して割引を拒絶し、これに合理的な理由があることを認めさせるに足る証拠はない。従つて、原告は連帯保証に対応する手形割引の債務の履行を拒絶したのであるから、本件連帯保証債務は右契約解除により消滅したものというべきである。

次に、被告会社は本件債務は時効により消滅した旨主張するけれども、原告主張二の事実は被告会社の認めるところであり、連帯債務者に対する請求は主債務者にも効力を及ぼすものと解するのが相当であるから、被告会社及び被告高瀬に対する最初の訴が休止満了により取下とみなされても破産者和田に対する最初の訴が係属している限り、商事債務である本件主債務の消滅時効は昭和三十三年八月六日同人に対する調停申立により中断しているものと解するのが相当であり、被告会社のこの抗弁は採用することができない。

次に、被告会社の弁済または相殺の抗弁は該弁済額または、相殺債権額が本件請求からすでに控除されていることが原告の主張から明白であり、原告の自認する額以上の債務が消滅したことについては主張も立証もないから、採用することができない。

よつて、被告会社が原告に対し原告主張の本件債務元本残額及び損害金を支払う義務を負担していることは明白であるから、これを認容しその余の被告らに対する請求は理由がないから、これを棄却す。

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